先週、相次いで発覚したアメリカ軍兵士による性暴力事件をめぐっては、政府が把握していた情報を、被害者のプライバシーを保護する捜査当局の判断を理由に、沖縄県側に伝えなかったほか、沖縄県警察本部からも情報提供がありませんでした。
情報共有の在り方について、県警から県に伝える正式な取り決めはなく、NHKが双方の元幹部や現職の幹部に取材したところ、アメリカ軍兵士による重大な事件・事故の発生の情報は、少なくとも10年ほど前まで担当者レベルで緊密に共有されていたことがわかりました。
県警の元幹部はNHKの取材に対し「公式なルートはなかったが、アメリカ軍関係の場合は、県庁にも行政機関として必要な対応が予想されるので、相互の信頼関係のもと、何かあればすぐに担当者レベルで伝え合っていた」と振り返りました。
一方、県庁の元幹部も「今回のような状態は経験がなく想像もつかない。例えば、被害者が不詳だとか、事件の性質上まだ公表できないとかについて、以前は連携を日頃からとっていたので、何かそごが生じたことはない」と証言しています。
ただ、こうした情報共有は、この数年の間に徐々になくなっていったということです。
背景について、県警の複数の元幹部は、SNSを使う人が増え被害者のプライバシー保護のため、情報提供により慎重な判断が求められるようになったことをあげています。
また、県の元幹部の1人は「基地問題をめぐって県と政府に溝ができてしまったことが影響し、県と県警の関係が悪化している」と分析していて、県警の元幹部の1人も基地問題をめぐって、県が政府との対立を深めていったことを念頭に「『県庁に情報を出したら政治活動に利用されるのではないか』という空気感があったのは間違いない。県庁に対して県警が近寄れないような壁を感じるようになった」と話しています。
情報共有をめぐっては、県警幹部や県議会議員から「県による県警への確認行為が十分ではなかった」という指摘も上がっていて、県警と県の双方の元幹部たちから関係の改善が必要だとする意見が聞かれました。